デジタルまいど No.1~N0.48
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digitalまいど第48号(2)タイプ印刷昭和20年代後半に業界にタイプ印刷が登場します。鉄筆でなく、タイプライターにより印字するのです。このあたりからは作業風景がイメージし易いですね。白い紙にリボンテープで印字する打ち方はタイピストにより力加減が異なり、印字の濃さにばらつきがでます。これを揃えるための調整が大変だったと当時の苦労話をよく聞きます。「軽印刷」という呼称が生まれたのはこの頃だそうです。写 植昭和39年には社名を「関西出版印刷株式会社」に改め、技術と経営の近代化を目指します。40年にはオフセット印刷の充実拡大を目標に、それまでの孔版、タイプ印刷からの脱皮と、写植の導入が検討され始めました。写植とは写真植字の略で、写植機とはタイプライターを写真と同じ原理に置き換えたもの。つまり、印画紙に文字をひとつずつレンズを通して露光していき、現像して作業が完了します。写植機には手動型と後に開発された電算型とがありました。行間、字詰めは歯送り数、文字の大きさは級数(Q数)にて指定し、レンズを通して長体、平体、斜体といった変形も行えました。文字の修正は、手動写植機の場合、切り貼りするしかありません。印画紙を薄く剥がし、新たに打った正しい文字を貼り直します。また、現在のようにデータとして残るわけではありませんので、文章全体の歯送り(詰め)や行間の変更などは全て一から打ち直す他ありませんでした。その後電算写植機の登場で、文字データを保存することが可能となりました。誤植の訂正、字詰めや級数の変更も印字データを修正するだけで、打ち直第1回目は「文字」について。いまあなたが読んでいるこの文字はどうやって印字されているか、考えてみたことがありますか?パソコンで入力する?…はい、正解!それではパソコンによるDTP以前はどのように文字を打っていたのでしょうか?謄写版昭和18年、戦争の最中に謄写印刷を始めた社名、吉田商会。これが現在のケーエスアイの母体です。この「謄写(とうしゃ)」とは、エジソンによって発明された謄写システムを我が国の文字の筆耕製版に適合するよう改良されたもので、蝋原紙を鑢版の上に乗せ、鉄筆で文字を書いていました。業界用語では孔版(こうはん)、一般的にはガリ版という呼び名でよく知られています。これは鉄筆を使うときにガリガリと音がする処に由来していたようです。昨年、創立60周年を迎えたケーエスアイ。ケーエスアイの歴史は印刷業界の変革の歴史そのものでもあります。そこで我が「デジタルまいど」では、これまでケーエスアイでの作業や業務がどのように変化してきたかを紹介していこうと思います。すような手間は少なくなりました。平成初頭までケーエスアイにおける文字処理は電算写植と電子組版システムが中心となりました。この頃書体とは写植機メーカー固有のものであり、A社の書体はA社の写植機にしか搭載されていませんでした。DTPの普及文字・図形・画像などをパソコンのディスプレイ画面上で同時に編集できるDTPが登場し、印刷業界に革新をもたらしました。文字の入力もしかり。写真などと一緒に紙面レイアウト上で確認でき、細かな調整も作業途中で簡単に変更が可能となりました。ケーエスアイでは平成7年にフィルムセッターを導入し、入力から出力までのフルデジタルシステムを完成させました。しかし、DTPはすぐに今日のような普及に至ったわけではありません。電算写植や電子組版システムのような高価な専用システムの技術をすべてカバーするまでには至らず、日本語組版ソフトやフォント、出力環境などに問題を抱えていたのです。DTPが今日の普及に至った背景にはPostScriptにより書体(フォント)がオープンになったことが挙げられます。現状の日本語フォントは「PostScript」フォント、「TrueType」フォント、「OpenType」フォントの3つに大別できます。DTPを取り巻く環境は日々変化し、進化しています。数年前まではMacintosh環境がほとんどを占めていましたが、今ではWindowsによるDTPも増えました。それに伴いフォントの環境も変化しています。現在OpenType の登場により、異なるプラットフォーム間でOSや機種の違いを問わず同様の出力が得られるようになりました。情報伝達手段として広く使われている印刷そして文字。両者の関係の裏側が少しでもご理解いただければ幸いです。次回は版下・製版についての予定です。DPSチーム 曽我久美子さん私はMK300という電算写植機のオペレータを経て現在はDTPのWindowsチームに所属しています。会社のDTPチーム発足当時はMacintoshのオペレータも経験しました。電算写植からいわゆるパソコンに作業環境が変わり一番苦労したのは「(良い意味での)アバウトさ」でした。電算写植では文字の始まる位置や書体・行間など全てをコマンドで細かく指定しなければならず、少しでもコマンドが違えば体裁が崩れてしまいました。現在のパソコンによるDTPは、どこでも好きな位置から入力が開始でき、コマンド入力も必要ありません。簡単な操作で書体や字詰めも変えられ、それが画面上でリアルタイムに確認できます。今では普通のこのやり方が逆に当時は非常に使い辛かった記憶があります。仕事の上での達成感?全く違うモノがありますね。電算写植の作業的な苦労を感じる反面、思い通りのものが上がった時の達成感は、今では味わうことができません。ですが現在はOSやアプリケーション、自分自身のスキル向上もあり、自由にチャレンジできる範囲が広がりましたので、それまで以上のやりがいの中に楽しさもを感じることができます。ただ、お客様からお褒めの言葉を頂いたときの嬉しさは、今も昔も変わりませんね。

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